第壱拾麓話 策略「ふん…無様にやられたものだな、ネビス」クロードが、たった今『名も無い崩れた塔』の最上階に戻ってきたネビスを見、言い放った。 確かにいきなりの奇襲だったとはいえ、ネビスと黒龍なら簡単に返り討ちにできてもおかしくないと思っていたからだ。 それが6人に返り討ちされたならいいが、たった2人にこれだけの傷を負わされ、同士の不甲斐なさにあきれてしまったのだ。 まぁ、それをいうならクロードも軽くない傷をおったわけだが。 「…クロードヨ、アマリネビスヲ責メルノハヤメテモラオウ。彼女モ同士トシテ一生懸命立チ回ッタノダ。」 「…祖龍様がいうのならば…」 祖龍にとがめられ、クロードはそれ以上ネビスを責めようとはしなかった。 だがネビスは自分の失態だと実感しているのか、クロードに肯定するような事を言った。 「祖龍様、クロード様の言う通り確かに私の勝手が招いた結果の傷です。とがめるのならば私を…」 しかし祖龍は、ネビスの失態など気にした様子もなく傷の事を聞いた。 「ネビスヨ、傷ハダイブ深イヨウダガ大丈夫ナノカ?」 「…この程度の傷、なんら支障は…祖龍様のご心配なさることではございません」 「…ソウカ、ナラサガッテヨイ」 ネビスが立ち上がり、下がろうとしたが、力無く後ろへ倒れかけたところを後ろにいた何者かが抱きとめる。 それは、たった今ハイ・エンド・コロシアムから帰ってきたセルフォルスだった。 セルフォルスは気絶したネビスをスウォームに預けると、祖龍を見、言う。 「ただいま戻りました、祖龍様。」 「セルフォルス、ヨクゾ戻ッタ。」 祖龍がセルフォルスの後ろにいる数人の人間を見ながら、言葉を続ける。 「…彼等ハ?」 「…例の、協力者達でございます」 クロードが、何者なのかを聞いた。 「だれだ?この人間達は?」 「数千年前に、地上へ完全追放された天使達でございます。クロード様」 「追放天使…?なぜそんな者達が我々のところへ?」 その答えは、祖龍が言い放った言葉によって理解する。 「彼等ハ、天上界ヘ行クコトガデキル術ヲ会得シテイル。ソノ術ヲ使ワセテモラウカワリニ彼等ノ天上界ヘノ反抗ヲ支援スルトイウ事デ、キテモラッテイルノダ」 しかし、未だ納得できないクロードは言う。 「ですが…我々が天上界に行って、何のメリットがあるのです?ルーツ様」 その答えは、横にいたゼグラムによって明らかになった。 「…天上界には、『グリモア』が保管されているのです。クロード殿」 「…!なるほど…」 納得したようにクロードが相槌を打ち、祖龍は言う。 「今回彼等ノ支援ニ回スノハ、クロードトゼグラム。オマエ達ニ行ッテモライタイノダガ…ヨイカナ?」 クロードはもちろんといった様子で首を振り、ゼグラムもやや遅れて同じ返事をした。 クロードは、祖龍様の役に立てるという事の他に、あるひとつの期待ももっていたのである。 ―天上界にいけば、ネビスたちをここまで追い込んだ相手に会えるかもしれない。 そして追放天使の一人が『ワープポータル』を開き、ゼグラムとクロードはその中に入っていった。 ジャンル別一覧
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